SHIKIMEI REVIEW
写真を理解するための3冊
『写真の新しい自由』(玄光社、2016年)
写真を理解するための3冊
『写真をアートにした男 石原悦郎とツァイト・フォト・サロン』(小学館、2016年)
写真を理解するための3冊
『通過者の視線』(月曜社、2014年)

写真を理解するための3冊

写真を愛し、写真に取り憑かれた男たち

わたしたちはどうして写真に惹きつけられるのでしょうか。現在はInstagramやSnapchatのように画像や映像が主体のSNSが人気を集めていますが、今日的な視覚的コミュニケーションのありようを考えるためにも、もういちど写真の原点に立ち返ってみると、さまざまなヒントが得られそうです。アプローチの多様さ、オリジナルプリントという概念、そして、私的な表現であるにもかかわらず普遍性を獲得してしまう不思議さ。今回とりあげるのは、写真というメディアのさまざまな特質に触れることのできる3冊です。

菅付雅信『写真の新しい自由』(玄光社、2016年)は、名編集者として知られる著者が、2010年代の写真の動向を取材したガイドブック。篠山紀信、マリオ・ソレンティ、ライアン・マッギンレーなど、国内外の著名な写真家を含め、取材者数はなんと150名。広告、ポートレート、風景、ドキュメンタリーはもちろん、アートからポルノグラフィーにいたるまで、多彩な分野で起きている動きを軽快にまとめています。現場の熱気を伝えるとともに、写真の行方を見通すための全体像が浮かび上がるのは、編集者としてのバランス感覚がなせる技。写真を愛し、写真に取り憑かれた著者だからこそ書けた好著です。

写真を愛し、写真に取り憑かれた人物といえば、ツァイト・フォト・サロンの故・石原悦郎さんを外すわけにはいきません。粟生田弓『写真をアートにした男 石原悦郎とツァイト・フォト・サロン』(小学館、2016年)は、40年近くにもわたり写真専門ギャラリーを運営してきた石原さんの歩みをたどり、さまざまな写真家たちとのエピソードを交えながら、美術品としての写真、すなわちギャラリーで売買されるオリジナルプリントという概念を日本に定着させたプロセスを、いきいきと描いたノンフィクションです(なお、ツァイト・フォト・サロンは、石原さんの死去にともない、2016年12月に閉廊することとなりました)。

石原さんと交友のあった写真家のひとりが森山大道さん。『通過者の視線』(月曜社、2014年)は、写真家の立場から書かれた写真論であり、卓越した文筆家としての側面がうかがえる随想集です。ダイアローグを含め、写真にまつわる散文がいくつも収められていますが、この本の中から写真の本質を捉えたフレーズをご紹介しましょう。
「去りし時代の記憶も、来たるべき未知の時間や風景も、日常カメラと共に街路を体感する視界のそこここに、実感と予感を孕みつつ、びっしりと浮遊している」。
森山さんの乾いた写真のかたわらには、こうした認識がつねに横たわっているのです。

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