SHIKIMEI REVIEW
クリスチャン・ボルタンスキー アニミタス—さざめく亡霊たち
《心臓音》「心臓音のアーカイブ」展(2008年)
展示風景 Courtesy Maison rouge © Christian Boltanski
クリスチャン・ボルタンスキー アニミタス—さざめく亡霊たち
《影の劇場》1984年
Photo: Andre Morain Courtesy the artist and Marian Goodman Gallery
クリスチャン・ボルタンスキー アニミタス—さざめく亡霊たち
《アニミタス》(小さな塊)、2014年
Photo: Angelika Markul Courtesy the artist and Marian Goodman Gallery

クリスチャン・ボルタンスキー
アニミタス—さざめく亡霊たち

東京都庭園美術館

東京都庭園美術館は、1933年、朝香宮夫妻の邸宅として建てられたもので、当時、パリを中心とするヨーロッパで全盛を誇ったアール・デコ様式で統一された美しい建物です。

大広間、大客室、小客室、大食堂、書斎など、7部屋のインテリアを手がけたのは、フランス人デザイナーのアンリ・ラパン。また、正面玄関のガラスレリーフ扉や、大客室と大食堂のシャンデリアは、同時代に活躍したガラス工芸家ルネ・ラリックによるデザインです。

建物全体の設計監理を行ったのは宮内庁内匠寮。ラパンのデザインやラリックの作品を効果的にとりいれ、エレガンスの極みともいうべき優雅な空間を完成させました。きらびやかな意匠は、美術的にも建築的にも貴重で、2015年には歴史的建造物として国の重要文化財に指定されました。

こうした由緒ある建築を利用し、繊細きわまりないインスタレーションを展開しているのが、クリスチャン・ボルタンスキーです。この世界的な美術家は、長年にわたり、〈歴史と記憶〉、〈存在と消滅〉、〈匿名的な個人の生と死〉などをモチーフに制作を続けてきました。旧朝香宮邸という歴史的な磁場が強い空間は、東京での初個展に実にふさわしい舞台と言えるでしょう。

1階に足を踏み入れ、優美な装飾に目を凝らしていると、どこからともなく、ひそひそとささやく声が聞こえてきます。断片的な言葉たちによって、あたかも映画のワンシーンに投げ込まれたような感覚すらおぼえますが、これは〈さざめく亡霊たち〉と題されたサウンド・インスタレーションなのです。

豪奢な階段を上り、2階の部屋をのぞくと、骸骨や天使、不思議な生きものたちがダンスを繰り広げる〈影の劇場〉が控えています。ボルタンスキーは、旧朝香宮邸に棲みついた不可視の存在を意識させることで、大文字の歴史と個人的な記憶を、そっと対置しようとしているのです。

隣接する新館ギャラリーでは、旧朝香宮邸での秘めやかな展示とは対照的に、大胆でエモーショナルなインスタレーションを展開しています。両者の緩急を受け止めながら、かすかではあるものの、たしかに存在している「アニミタス(霊魂、生命)」を感知すること。時間をかけて歩を進め、ときにはソファやバルコニーで休憩をとりながら、ゆっくりと思考を巡らせたいエキシビションです。

会期  :2016年9月22日(木・祝)~12月25日(日)
開館時間:10:00〜18:00
※ただし11月25日(金)・26日(土)・27日(日)は
夜間開館のため20時まで
※いずれも入館は閉館の30分前まで
休館日 :第2・第4水曜日
観覧料 :一般900円 大学生(専修・各種専門学校含む)720円
中・高校生・65歳以上450円
※上記料金で同時開催「アール・デコの花弁 旧朝香宮邸の室内空間」展も観覧可能
http://www.teien-art-museum.ne.jp/exhibition/160922-1225_boltanski.html

ART

INTERVIEW

BOOK