SHIKIMEI REVIEW
篠山紀信展 「快楽の館」
篠山紀信「快楽の館」2016年
© Kishin Shinoyama 2016
篠山紀信展 「快楽の館」
篠山紀信「快楽の館」2016年
© Kishin Shinoyama 2016
篠山紀信展 「快楽の館」
篠山紀信「快楽の館」2016年
© Kishin Shinoyama 2016

篠山紀信展 「快楽の館」

原美術館

トップランナーとして日本の写真界をリードしてきた篠山紀信さんが、もっとも得意とするヌード写真の領域で、たいへんユニークな試みを行なっています。開催中の「快楽の館」展は、原美術館で撮影した写真を、まさにその原美術館で展示するという前代未聞の企画です。

もともと原美術館は1930年代に建てられた個人住宅をリノベーションし、ミュージアムとして再生した施設。モダニズム華やかなりし頃の意匠や造形は、建築史的にも重要なものとなっています。篠山さんは、趣のある空間を最大限に利用し、幻想に彩られた優美なヌード写真を生み出しました。かつて撮られた写真が、〝いまここ〟であざやかによみがえり、時間と空間が二重写しになる幻惑。館のそこかしこで、白日夢のような世界が繰り広げられています。

篠山さんいわく、「美術館は作品の死体置き場」。そう、この館には死の匂いが充満しているのです。タナトスに満ち満ちた空間に、蠱惑的な表情を浮かべる裸の美女たちを配する行為。それは生の歓喜の根源たるエロスを対置することに他なりません。死と生が織りなす目眩をもたらすような饗宴は、神話の域に達していると同時に、ヌード写真という表現がもつ強い力を、まざまざと感じさせてくれます。

もうひとつの見どころは、常設展示とのコラボレーション。森村泰昌、須田悦弘、宮島達男、ジャン=ピエール・レイノーなど、名だたるアーティストが手がけたインスタレーションと秘めやかな情交を結ぶかのように、篠山さんは作品の内部にそっと分け入り、まったく新しい局面を演出してみせたのです(その点、もっとも象徴的なのは、奈良美智さんのインスタレーション〈My Drawing Room〉とともに撮影されたヌード写真でしょう。奈良作品に特徴的な無垢性や幼児性が反転し、ある種のまがまがしさすら感じさせる情景になっています)。

篠山さんのたぐいまれなる〝写真力〟によって構築された「快楽の館」。空間の本質を、大胆な手法であらわにしたという意味では、これらヌード写真の真の主役は、原美術館という建物そのものなのかもしれません。

会期:2016年9月3日(土)〜2017年1月9日(月・祝)
開館時間:11:00〜17:00(祝日をのぞく水曜は20:00まで/入館は閉館時刻の30分前まで)
休館日:月曜日(祝日にあたる1月9日は開館)、年末年始(12月26日〜1月4日)
入館料:一般1100円、大・高生700円
http://www.haramuseum.or.jp

ART

INTERVIEW

BOOK