SHIKIMEI REVIEW
ホンマタカシ
「Various camera obscura studies – inprogress」

mount FUJI 1/36 ©Takashi Homma courtesy of TARO NASU
ホンマタカシ
「Various camera obscura studies – inprogress」

“Various camera obscura studies - inprogress” 2016,
Installation view at TARO NASU ©Takashi Homma
Courtesy of TARO NASU photo by Keizo Kioku
ホンマタカシ
「Various camera obscura studies – inprogress」

“Various camera obscura studies - inprogress” 2016,
Installation view at TARO NASU ©Takashi Homma
Courtesy of TARO NASU photo by Keizo Kioku

ホンマタカシ
「Various camera obscura studies – inprogress」


TARO NASU

ニューヨーク近代美術館(MoMA)で写真部門のキュレーターを務めていたジョン・シャーコフスキーは、1978年に『鏡と窓』と題する展覧会を企画しました。60年代以降のアメリカの写真を、自己=内面を映し出す鏡と、他者=外界を捉えるための窓といった見方で、ふたつに分けたのです。

およそ40年前、シャーコフスキーが投げかけた問いかけは、はたして現在も機能するのでしょうか。実はいま、鏡と窓という魅力的な隠喩を、あえて導入したくなるようなふたつの展示が、偶然、同じ時期に開催されているのです。〝鏡〟の写真家は鈴木理策さん、〝窓〟の写真家はホンマタカシさんです。

これまでホンマタカシさんは、多彩な写真を発表してきました。一貫しているのは〝写真とは何か〟という根源的な問いかけ。その姿勢を全面的に打ち出したのが、2011年に開催された大規模な個展「ニュー・ドキュメンタリー」(東京オペラシティ アートギャラリー)です。なにしろそこには、展示用のプリントに加え、シルクスクリーン、印刷物、映像、インスタレーションなど、さまざまな形式の〝写真〟が並んでいたのですから。

近年はカメラの原理を体現するピンホールカメラに関心を向けているようです。展示タイトルにある〝camera obscura(カメラ・オブスクーラ)〟とは、ラテン語で「暗い部屋」の意味。辞書を引くと、これは「小さな穴から入る光が、対面の壁に外の光景を倒立像に映し出す現象の起きる暗い部屋や暗箱」のことで、カメラの語源となった言葉です。
興味深いのは、窓に面した部屋をカメラの暗箱に、窓をレンズとシャッターに見立て、屋外の光景を撮影していること。この〝都市で都市を撮る〟シリーズでは、東京やニューヨークらしき都市の風景写真も並んでいますが、特筆すべきは、3枚で構成された富士山の組写真です。ある意味、通俗的なイメージにまみれた素材を新たな手法で写し取る試みは、ホンマさんが折に触れて引用する、スーザン・ソンタグの言葉を実践したものと捉えてもかまわないでしょう。すなわち、〝Photography is, first of all, a way of seeing. It is not seeing itself(写真とは何よりもひとつの見方であり、見ることそれ自体ではないのだ)〟。

作家トーベ・ヤンソンの邸宅で撮影されたシリーズは、ごく単純に、窓から見える景色を捉えているのですが(その光景に荒涼としたものを見出すか、それとも詩情豊かなものを感じるかは鑑賞者次第)、ここでは外の風景を切り取る役目を果たす窓枠の存在が、写真表現におけるフレームのアナロジーにもなっていて、見方によっては二重三重の仕掛けが施されています。

なお、ホンマさんはドキュメンタリー映画も継続的に撮影しており、現在、シアター・イメージフォーラムで「ホンマタカシ ニュードキュメンタリー映画 特集上映」と題した企画が行われています。伝説の写真家・中平卓馬さんの暮らしを追った『きわめてよいふうけい』など5作品が上映中です。

会期  :2016年11月18日(金)−12月24日(土)
開廊時間:10:00〜18:00
休廊日 :日・月・祝日
http://www.taronasugallery.com/

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