SHIKIMEI REVIEW
永戸鉄也 ENZO 「Paper Show」
永戸鉄也 ENZO 「Paper Show」
永戸鉄也 ENZO 「Paper Show」

永戸鉄也 ENZO 「Paper Show」

104GALERIE/104GALERIE-R

ドイツ文学者の野村修は、ヴァルター・ベンヤミンのことを「ドイツのもっとも尖鋭で繊細な、もっともラディカルでノン・コンフォーミスティックな思想家であり文学者」と評しています。このベンヤミンが1930年代に記した美しい文章「一九〇〇年前後のベルリンの幼年時代」を、もしも特異な文体で知られるSF作家ウィリアム・ギブスンがずたずたに切り裂き、21世紀のためのテクストとしてリエディットしたら? そんな馬鹿げた夢想を誘うのが、アートディレクターの永戸鉄也さんと、セットデコレーターのENZOさんによるコラージュです。

今回のエキシビションは、ENZOさんが運営する「104GALERIE」と、普段は工房として使っている「104GALERIE-R」、ふたつの会場で開催されています。まずは前者で、ある意味、オーソドックスな展示を味わい、そのあと、後者に足を運ぶことをおすすめします。というのも、104GALERIE-Rでの見せ方は圧倒的で、タイトル通り、紙の饗宴(Paper Show)が繰り広げられているからです。

コラージュの素材は、ベルリンの街中に貼られたポスター類。ふたりはそれらを壁から剥がし、総重量150キロにもおよぶ量を蒐集したそうです。そうした来歴も含め、ここでの紙はとてつもなく荒々しい表情を見せています。用済みとなった無数の印刷物を無秩序に貼り合わせ、ただひたすら即興的に重ね合わせること。そしてジャンクな怪物へとメタモルフォーズさせること。ふたりの過剰な意思と徹底的に非人称的な行為は、コラージュという方法論すら解体しようとしているかのようです。

量塊/積層としての紙は意味を失い、それらと相対するわたしたちの思考や感情も、宙づり状態のまま留め置かれます。紙のかたまりたちは、さまざまなノイズが混入する壊れかけたラジオのようなものとして、異様な姿を晒すのみ。この静かな騒々しさ(なんという矛盾!)をはらんだインスタレーションは、2016年に100周年を迎えたダダイズムの運動に敬意を表したオマージュ/反オマージュと見なすこともできるでしょう。

思えばベンヤミンは、ダダイズムやシュルレアリスムを高く評価しましたが、この批評家が書いたもっとも有名かつ今なお色褪せることのない文章を、無造作に切り貼りして言うなら、「真剣さと遊戯性、厳格さと無拘束性が、Paper Showのなかに、絡まり合って現出している」のです。

第1会場:104GALERIE(東京都目黒区青葉台3−22−1 目黒ハイツ104)
第2会場:104GALERIE-R(東京都目黒区大橋1−6−4 GARAGE)
会期  :2016年12月10日(土)−2017年1月31日(日)
開廊時間:12:00−20:00
休廊日 :水曜日、年末年始(12月27日−1月6日)
http://www.104galerie.com

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