SHIKIMEI REVIEW
ダン・フレイヴィン展「DAN FLAVIN」
"MONUMENT" FOR V. TATLIN (V タトリンのための“モニュメント")
1964-1965年 8本の白色直管蛍光灯/ Set of 8 white fluorescent tubes  244 x 80 x 12 cm
Courtesy Fondation Louis Vuitton  ©ADAG P, Paris 2017
ダン・フレイヴィン展「DAN FLAVIN」
UNTITLED(無題) 1963年
緑の直管蛍光灯/ Green fluorescent tube  244 x 10 x 7 cm
Courtesy Fondation Louis Vuitton  ©ADAGP, Paris 2017
ダン・フレイヴィン展「DAN FLAVIN」
ALTERNATE DIAGONALS OF MARCH 2、1964 (TO DON JUDD)
[3月 2 日のもう l つの「斜め線」(ドン・ジャッドヘ)] 1964年
直管蛍光灯(昼光色) / Fluorescent tubes (daylight)  長さ369.6cm / Diagonal length 369.6 cm
Courtesy Fondation Louis Vuitton  ©ADAGP, Paris 2017

ダン・フレイヴィン展「DAN FLAVIN」

エスパス ルイ・ヴィトン東京

2014年、ブローニュの森に誕生したフォンダシオン ルイ・ヴィトンは、世界有数の現代美術コレクションで知られています。きわめて印象的な建築は、現代建築の鬼才フランク・ゲーリーによるもの。開館直後からパリの新名所として注目を集め、1年後には入場者数100万人を突破しました。

今回、エスパス ルイ・ヴィトン東京では、フォンダシオン ルイ・ヴィトンのコレクションの中から、ダン・フレイヴィンの作品を7点公開しました。このガラス張りのアートスペースは、青木淳が設計したルイ・ヴィトン表参道ビルの7階に設けられており、光のアーティストであるダン・フレイヴィンの作品を展示するには、うってつけの場所と言えるでしょう。外光が降り注ぐ日中と日が暮れた後の夕方以降では、作品の見え方がまったく異なり、フレイヴィンの可能性を示唆するという意味では、たいへん斬新な企画です。

ダン・フレイヴィンは、ドナルド・ジャッドやロバート・モリス、ソル・ルウィットらとともに、ミニマリズムを提唱・実践したアメリカ人アーティストです。その特徴は既製品の蛍光灯のみを使っていること。フレイヴィンは、1963年に制作した〈The Diagonal of May 25, 1963〉以降、4種類のサイズと10種類の色(青・緑・ピンク・黄・赤・紫外線、そして4種類の白)の蛍光灯を用いるようになりますが、こういった必要最低限の素材、すなわちミニマルな要素だけで豊かな空間構造を表出しようという姿勢から、ミニマリズムの潮流は生まれました。

展示されている7つのうち4つの作品は、1964年から1970年にかけて制作された〈“Monument” for V. Tatlin〉のシリーズです。これらはロシア・アヴァンギャルドのアーティスト、ウラジミール・タトリンに捧げられたもので、1990年までに50点もの作品が制作されました。いずれもタトリンが構想した鋼鉄製のモニュメント〈第三インターナショナル記念塔〉がモチーフになっています。

ミニマリズムとロシア・アヴァンギャルド。一見すると、その結びつきは突拍子もないものに思えるかもしれません。しかし、蛍光灯という工業製品を用いるフレイヴィンにとって、タトリンの〈第三インターナショナル記念塔〉は、「芸術と工学を融合させたいと願ったこの男の無益な頑固さ」を示すものでした。そこにはタトリンに対するリスペクトとともに、夢想的なヴィジョンに対するアイロニーも感じられますし、同一のモチーフをさまざまに反復させながら変奏していく方法論は、たとえばスティーヴ・ライヒのミニマルミュージックを思わせるところもあり、興味は尽きません。

フレイヴィン自身は、「素材である『光』を宗教的、あるいは神秘的に解釈すること」を徹底的に拒否していたらしく、実際、作品の前に立つと、そうした意図は明確に伝わってきます。しかし、この光のコンポジションだけでかたちづくられた表現は、即物的であるがゆえに、アニミズムのような原始宗教に通じるところもあり、どこか崇高さをおぼえるような感覚をもたらしてくれるのも事実です。光がさまざまな波長を含んでいるように、フレイヴィンの作品も、こうした逆説を含んでいるからこそ、静かな内観をうながすのかもしれません。繰り返しますが、外光が降り注ぐ日中と、日が暮れた後の夕方以降では、作品の見え方がまったく異なります。時間をおいて、何度か足を運びたいエキシビションです。

会期 :2017年2月1日(水)−9月3日(日)
時間 :12:00−20:00(エキシビション会期中のみ)
休廊日:ルイ・ヴィトン表参道ビルに準じる
http://www.espacelouisvuittontokyo.com

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