SHIKIMEI REVIEW
N・S・ハルシャ展:チャーミングな旅
N・S・ハルシャ《ここに演説をしに来て》(部分)2008年
アクリル、キャンバス 182.9 ×182.9 cm(×6)
N・S・ハルシャ展:チャーミングな旅
N・S・ハルシャ《ネイションズ(国家)》2007年
展示風景:シャルジャ・ビエンナーレ9、アラブ首長国連邦、2007年
N・S・ハルシャ展:チャーミングな旅
N・S・ハルシャ《レフトオーバーズ(残り物)》(部分)2008年
展示風景:「レフトオーバーズ」銀座メゾンエルメス フォーラム、東京、2008年
© Nacása & Partners Inc. Courtesy: Fondation d'entreprise Hermès

N・S・ハルシャ展:チャーミングな旅

森美術館

2016年がタイ東北部出身の映像作家アピチャッポン・ウィーラセタクンの年だったとすれば、2017年は南インド出身のアーティスト、N・S・ハルシャの年になるかもしれません。いま、アジアのアートシーンはダイナミックな動きを見せています。

N・S・ハルシャは、1969年、南インドの古都マイスールに生まれ、現在も現地で制作を続けるアーティストです。インドの現代美術は、急速な経済成長や都市化とともに、国際的に評価されていますが、N・S・ハルシャも各地の国際展に出品し、日本でも2008年に開催されたグループ展「チャロー! インディア:インド美術の新時代」(森美術館)の参加アーティストとして注目を集めました。多彩な手法、作品の背景にある南インドの自然や伝統文化、文脈の多様性から、独自の立ち位置で知られるN・S・ハルシャ。今回の展示は、1995年から最新作にいたるまで、およそ20年にわたり制作されてきた作品群を網羅し、その世界観を掘り下げようというものです。

見どころはいくつもありますが、もっとも特徴的なのが、故郷マイスールを拠点に描かれた作品群でしょう。マイスールというローカルから眺めたグローバルな世界のありよう。それはインドがグローバル経済の編み目に絡め取られた状況のアレゴリカルな写し絵になっています。N・S・ハルシャは南インドの自然や素朴な暮らしぶりを敬意をもって表現するとともに、ユーモアとアイロニーに満ちた批評的な視線を重ね合わせ、作品内部に独自の空間を織り上げたのです。

マイスールという一地域から見たインド全体の政治的・経済的発展、グローバル化の実態を、ローカルな問題にとどまることなく、世界各地に共通する動向としてその関係性を示唆するN・S・ハルシャ。その作品は、日本人にとっても身近で切実な課題を内包しています。

それにしても、グローバル化によって、はたして世界は均質化しつつあるのでしょうか。そうした問いかけに対しても、その認識は違うのではないかと、やんわり指摘するような作品が並んでいます。とりわけ大量の人物を細密に描き込んだ作品は、遠目に眺めるとひとつの集団をなしていますが、キャンバスに近寄ってみると個々の存在感が際立ち、豊かな細部が立ち現れる仕掛けになっています。絵巻物やマンガを思わせるところもあり、観ていて飽きることがありません。N・S・ハルシャが描いているのは、この世界の多様性であり、生を謳歌する人々に対する賛歌なのです。

会期 :2017年2月4日(土)−6月11日(日)
時間 :10:00−22:00 火曜日は17:00まで ※入館は閉館時間の30分前まで
休館日:会期中無休
入館料:一般1800円 高校・大学生1200円 4歳−中学生 600円 65歳以上 1500円
http://www.mori.art.museum

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