SHIKIMEI REVIEW
江戸期の民藝 -暮らしに息づく美-
新館2階・大展示室の展示風景(看板と革羽織) 写真提供:日本民藝館
江戸期の民藝 -暮らしに息づく美-
麦藁手碗 瀬戸 19世紀 高6.7cm 写真提供:日本民藝館
江戸期の民藝 -暮らしに息づく美-
筍籠 京都 19世紀 縦27.0cm 写真提供:日本民藝館

江戸期の民藝 -暮らしに息づく美-

日本民藝館

私たちが日常的に使っている「民藝」という言葉。実は、造語であることをご存知でしょうか。1925(大正 14)年、白樺派の同人で宗教哲学者でもあった柳宗悦と、陶芸家の河井寛次郎、濱田庄司らが「民衆的工藝」を略して生み出した言葉であり、彼らが展開した運動の総称です。その内容を端的にあらわすエピソードに、次のようなものがあります。「籠に乗る人、籠を担ぐ人、担ぐ人の草履を編む人がいる。その草履を編む人に焦点が当たったこと」 つまり、誰も見向きもしなかった無名な職人がつくった食器や衣服、農具などの雑器に着目し、それらのなかに美を見出し、民藝と呼んだのです。

柳らが民藝運動を興した経緯をたどると、18世紀後半にイギリスで始まった産業革命に行き着きます。産業革命は、機械による生産により安価な製品を大量に提供することを可能とした一方、多くの粗悪品が世に出まわる結果を生みました。その流れは明治維新後の日本にも影響をもたらし、全国各地の健全な手仕事は次第に衰退していく状況にあったのです。

裏を返せば、鎖国という閉鎖的な体制を敷いていた江戸時代は、日本の手仕事の黄金期だったといえるでしょう。柳も「工藝が民衆のものとなり、純日本のものに消化されて発達したのは、むしろ徳川時代なのです」(「日本民藝館について」1941年)と指摘しています。

現在開催中の「江戸期の民藝 -暮らしに息づく美-」では、焼物、漆器、染織品、民画など、約200点の優品が展示されています。そのうちのいくつかをご紹介します。まず、鹿革をなめした印伝の「革羽織」。江戸では火事が多かったため、火消(現代の消防署、消防団)はヒーローでもありました。耐火性に優れる革羽織は、火消やとび職の棟梁の衣装として用いられました。各組の旗印となる「纏」の入った革羽織を着て、先頭に立って颯爽と消火に当たる姿は粋だったことでしょう。今でも、地方の消防団などでその名残が見られます。次に、瀬戸焼の「麦藁手」の飯碗。柳は著書『手仕事の日本』のなかで麦藁手を称賛しており、また麦藁手の名付け親ともいわれています。今も瀬戸でつくられていますが、描き手は少なくなっており、また原料の影響からかつての色の再現は難しくなっているそうです。京都の「筍籠」もすばらしい手仕事です。外部での使用を想定して安定させるためにつけられた脚や、壊れやすい縁の部分を補強した頑丈なつくりなど、まさに民藝美といえる健やかさが感じられます。また、全体に塗られた漆は耐久性を高めると同時に、都ならではの雅さを醸し出しています。

日本民藝館ではいつものことですが、ものに関する情報は最低限にとどめています。これは知識よりも「直感」、つまり先入観を持たずに観ることが大切である、という柳の考えにもとづくものです。ぜひ、民藝館を訪れ、想像力を開放し、古きよき江戸時代にタイムスリップされてみてはいかがでしょうか。

会期 :2017年4月4日(火) − 6月18日(日)
時間 :10:00 – 17:00(入館は16:30まで)
休廊日:月曜(祝日の場合は開館し、翌日休館)
入館料:大人1,100円(900円)、高大生600円(500円)、小中生200円(150円)
※( )は20名以上の団体

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