SHIKIMEI REVIEW

アブラハム・クルズヴィエイガス展「水の三部作 2」

銀座メゾンエルメスフォーラム

アブラハム・クルズヴィエイガスさんは、1968年にメキシコシティに生まれ同地を拠点として2000年代から世界各国で精力的に活動しているアーティストです。近年ではテート・モダン(英国)、ウォーカー・アートセンター(米国)での個展をはじめ「ドクメンタ13」「第50回ヴェネチア・ビエンナーレ」「第9回光州ビエンナーレ」に参加。訪れた土地にあるローカルなものを用いて単体オブジェから大規模な建築的インスタレーションまでつくりだす自身の制作や在り方は「自己構築」という言葉でシリーズ化され世界的な人気を博しています。そんな彼が2017年に個展をおこなう3都市(パリ/東京/ロッテルダム)の共通項として水をメタファーに設定し、制作する展覧会の総称が「水の三部作(The Water Trilogy)」なのです。

第2章にあたる本展の舞台は、建築家レンゾ・ピアノ氏がデザインしたガラスブロックの壁が心地よい自然光を会場内に届ける「銀座メゾンエルメス フォーラム」。高い天井から吊り下げられた大きなオブジェには日本の新聞紙が貼られ、朝顔の葉が顔をのぞかせています。これはメタボリズム建築(都市の新陳代謝)の代表例である黒川紀章氏設計の「中銀カプセルタワービル」の現在の様子からインスパイアされ「自己構築」により会場で完成した作品。このオブジェの中にメキシコ人のミュージシャンが入り、作家のオリジナルソングを演奏した際の映像は、再利用の段ボールでつくられたオブジェに投影されています。また、作家が食べたお菓子の袋や領収書といった滞在中に手にしたものは水色にペイントされ集合壁画と化し、日本の鉈や包丁、鋏などでダイレクトに作品が固定された展示もあります。これらは、幼少期を過ごしたメキシコシティ郊外における「セルフ・ビルディング」運動や、密集したマーケットに見る「美的な乱暴さ(混沌)」をルーツにする作家らしい演出といえます。さらに、会場では「ウーパールーパー」がつぶらな瞳で来場者を見つめています。このナマズの仲間はメキシコ原産の希少生物であるのに、日本では簡単に安く購入できることに作家は驚いたのだとか。日本では古くから地震との関連性が伝えられるナマズをモチーフにしている点にも、作家独自の歴史や社会への眼差しが色濃く反映されているようです。

陽気なメキシコ音楽のBGMとは対照的に、観るほどに日本の現在の姿がシリアスに浮かびあがる本展。しかし印象として残るものは難解さではなく、水が育み循環する生命の豊かさ。そしてこの展覧会を通して、クルズヴィエイガスさんのファンは日本でも増殖し、新しい文化で鑑賞者を上質にもてなすこの家(メゾンエルメス)に再訪する人も増えることでしょう。

会期 :2017年4月21日(金)− 7月2日(日)
時間 :11:00 – 20:00(日曜のみ19:00まで)※入館は閉店30分前まで
休廊日:不定休(エルメス銀座店の営業時間と同じ)
入館料:無料
http://www.maisonhermes.jp/ginza/le-forum/archives/405257/

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