SHIKIMEI REVIEW

JPタワー学術文化総合ミュージアム「インターメディアテク」

「INTERMEDIATHEQUE(インターメディアテク=IMT)」は、日本郵便と東京大学総合研究博物館(UMUT)による産学協働のプロジェクト名であり、2013年に丸の内のKITTE(2F・3F)に開設された公共施設です。「間メディア実験館」という日本語訳には、既存の博物館や美術館といった領域を超えた実験の場として、各種の表現メディアを架橋することで新しい文化の創造に貢献するというコンセプトが表れています。

旧東京中央郵便局舎(保存棟)のもつ趣を活かしてリノベーションされた約3,000㎡の空間では、明治10年の創学から東京大学が蒐集してきた膨大な学術標本コレクションの中から稀少性や学術性において瞠目すべき自然史の資源が厳選された常設展示を中心に、複数の企画展示が開催されています。さらに、寄贈された8,000枚以上という貴重なSPレコードからセレクトされた曲を蓄音機で聴ける音楽鑑賞会や古い映画のデジタル上映、対談など教育・文化的なイベントを階段教室[アカデミア]で体験することもできます。

巨大なマチカネワニの骨格標本が壁を登る[ホワイエ]とつながる2F展示場の入口扉には魚眼レンズがあり、覗き込むと博物学的な小宇宙が浮かびあがります。この展示スペースは約60mの奥行きがありますが、決められたルートはありません。興味の赴くまま、散歩するように常設展示を見て、ところどころに出没する企画展示にも遭遇できる仕組みになっています。

高い天井に配管が剥き出しになった躯体は、歴史の重みを感じさせる旧郵便局舎の建材や東京大学で使われていたレトロな備品が再利用され「レトロ・フュチュリズム」を体現する驚くほど美しい空間に蘇っています。例えば、古い大理石の台座と新しい円柱形ガラスを組み合わせた什器によって「1本の山羊の骨」がアート作品のような斬新な輝きを帯びています。また、あえて不規則なリズムで並べられた幾何学造形のガラスケースは視界を晴らし、什器上部に貼られた和紙は照明の光をやわらげ中の剥製や骨格標本などの展示品に生き生きとした存在感を与えています。

その同じ空間で、「ベネチア・ビエンナーレ(2017)」フランス館代表作家のグザヴィエ・ヴェイヤンの彫刻や、ギメ東洋美術館の創設者エミール・ギメの父親が開発した、「イブ・クラインのブルー」のルーツとなる合成顔料「ギメ・ブルー」、シュールレアリストのマン・レイも影響を受けたとされる19世紀の幾何学模型、機械工学の基本的な仕組みを表す教材といった多分野にわたる展示が鑑賞でき、歩を進めるほど興味が湧きあがるような仕掛けに満ちています。

このような19世紀からつづく博物学の展示方法と21世紀の最新デザインが融合した画期的な展示システムは、西野嘉章館長とIMTの研究員チームが軸となり各関連機関や人物との連携によって、未来へ受け継がれるべき価値づくりを見据えてつくりあげられたもの。そして、人類の遺産といえる重要な資源に、美学や博物学など専門的な見地からの創意工夫と感性的な意匠が加えられた「ReDESIGN+」と呼ばれるIMTの理念の現れでもあるのです。

もし数々の展示を巡って休憩が必要となったら、ぜひ奥に潜む異空間に辿りついてください。かつてヨーロッパの王侯貴族が世界を巡り蒐集した珍品陳列を邸宅で披露し、後にミュージアムの起源ともいわれる「驚異の部屋(Wunderkammer)」の再現があります。ここでは、クラシカルなソファに深く腰掛けながら、大航海時代の人が世界を旅して手にいれた「驚き」をゆったりと追体験することができます。

IMTには、幾つもの知的発見や眼の愉悦ともいえる視覚体験が待ち受けています。私たちが宇宙を広いと感じるように、この空間や1つひとつの展示品の中にも壮大な歴史や人類の営みが広がりをもって感じることができるでしょう。いちど来場しただけでは尽きない魅力が詰まっていますが、企画展示のみならず常設展示も適宜入れ替えがおこなわれているとのこと。この世界でも希有な実験の場は、一般に無料で開放されているので、何度でも訪れてみたいものです。

常設展示「MADE IN UMUT – 東京大学コレクション」
※各企画展示などの詳細はホームページからご覧ください
会期:2013年3月21日(木) –
時間:11:00 – 18:00
(金曜・土曜は20:00まで/入館は閉館の30分前まで)
休館日:月曜(月曜が祝日の場合は翌日)、年末年始ほか館が定める日
入館料:無料
http://www.intermediatheque.jp

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