SHIKIMEI REVIEW
田名網敬一「貘の札」
Copyright by Keiichi Tanaami
Courtesy of NANZUKA
田名網敬一「貘の札」
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田名網敬一「貘の札」
Copyright by Keiichi Tanaami
Courtesy of NANZUKA

田名網敬一「貘の札」

NANZUKA

田名網敬一さんは1936年に東京で生まれ、1960年代から「編集」という方法論をもちいてデザイン、イラスト、絵画、版画、実験映像、アニメーション、コラージュ、立体などメディアやジャンルの境界を果敢に横断し創作活動をつづける孤高の現代美術家です。日本におけるポップアート、サイケデリックアートの先駆者としても知られ、MoMA(アメリカ)、M+ Museum for Visual Culture(香港)、Nationalgalerie im Hamburger Bahnhof (ドイツ) といった数多くの美術館が氏の作品を収蔵しています。また、KAWS(カウズ)を筆頭に影響力をもつカルチャーリーダーたちが作品への支持を表明したことで新たなファン層を拡張しながら、国際的な評価を高めている希代のアーティストとしても注目を集めています。

「貘の札」は、渋谷を拠点とする「NANZUKA」が同ビル地下1階から地下2階へ移転後に初めて開催するメモリアルな展覧会。画廊としては3年ぶりの田名網氏の新作展になります。以前はクラブとして人々が踊っていたメインの地下空間には、横3mの大作2点を含む新作ペインティング約10点が展示され、ポップで奇怪な作品世界が強烈な光を放って来場者たちを圧倒しているようです。そこに描かれているアメリカンコミックを引用した爆撃機、擬人化した爆弾、スカルのモンスターや動物たちは、作家が幼少期に見た戦争の記憶や、1978年から記された夢日記、40代で結核を煩い生死を彷徨っていた時にみた幻覚を記録した絵日記といった作家の実体験と深く関係しているといいます。新作ではこれらのモチーフと平行して、作家が好きなアーティスト[キリコ、ウォーホル、リキテンシュタイン、若冲、エッシャー]の作品も登場。作家自身が「死後に住む世界」を描いたと解説される作品には、氏が辿ってきたアートへの愛も表れているようです。そして、これらの独創的な新作から伝わる不思議な明るさや優しいフィーリングは、「死」への恐怖を克服しようとする強烈な「生」へのエネルギーがもたらすものであり、悪夢を避けるものとして寝床に敷かれた“貘の札”がこの新作展のタイトルに名付けられた由来もそこにあるといえるのではないでしょうか。

奥の空間では昨年NYでの個展やサンダース映画祭など複数の映画祭で上映された映像作品「笑う蜘蛛」も鑑賞でき、さらに田名網氏の近作イメージを収録した、宇川直宏アートディレクションによる400頁の豪華本『貘の札』(100部限定でブロンズケース販売)と、40Pの大判ペーパーブック『Psychedelic Death Pop』(大判ステッカー2点収録)も展示販売されています。刮目すべき現在の田名網ワールドを堪能できる、この貴重な機会をどうぞお見逃しなく。

会期:2017年6月24日(土)- 8月5日(土)
時間:11:00 – 19:00
休館日:日曜、月曜、祝日
http://nug.jp/jp/top/index.html

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