SHIKIMEI REVIEW
ヨコハマトリエンナーレ2017 島と星座とガラパゴス
アイ・ウェイウェイ /《安全な通行》2016《Reframe》2016 撮影:加藤健©Ai Weiwei Studio 写真提供:横浜トリエンナーレ組織委員会
ヨコハマトリエンナーレ2017 島と星座とガラパゴス
クリスチャン・ヤンコフスキー /《重量級の歴史》2013 Photographer: Szymon Rogynski Courtesy: the artist, Lisbon Gallery
ヨコハマトリエンナーレ2017 島と星座とガラパゴス
パオラ・ピヴィ/《I and I(芸術のために立ち上がらねば)》2014 Photo: Guillaume Ziccarelli Courtesy of the Artist & Perrotin

ヨコハマトリエンナーレ2017 島と星座とガラパゴス

横浜美術館、横浜赤レンガ倉庫1号館、横浜市開港記念会館地下ほか

2001年に日本で先駆けとなる現代アートの国際展として開催されて以来、今年で6回目を数える「ヨコハマトリエンナーレ2017」が開幕しました。国内外で活躍する約40組のアーティストが主会場の横浜美術館、横浜赤レンガ倉庫1号館、横浜市開港記念会館地下を中心に作品を展示。来場者はさまざまなプログラムとともに横浜を楽しみながら鑑賞できます。示唆に富んだタイトル「島と星座とガラパゴス」は、キーワードの“接続/孤立、想像力/創造力、独創性/多様性”を手がかりとして、「接続」と「孤立」をテーマに、グローバル化が進む一方での紛争や難民・移民の問題や英国のEU離脱、ポピュリズムの台頭などで大きく揺れる「世界のいま」を考えようと名付けられました。「アートなら、世界中に点在する「ガラパゴス」をこれまでにない方法で繫ぎ変えることができる。」スプツニ子!(構想会議メンバー)

会場はアイ・ウェイウェイによる横浜美術館の正面壁いっぱいに救命具が配された大作が出迎え、1作家ごとに広めの空間が設けられた“個展の集合体”ともいえる構成で、作家や作品世界と深く対面できるようになっています。また参加アーティストの年齢は「比較的高い」(最年少は1988年生まれ。2012年に陸前高田に移住し、未来から語られる東北の震災を表した瀬尾恵美。最高齢は1947年生まれ。震災後の他者・同化の確認作業を巨大な鉛筆画で魅せた木下晋)とのこと。これまで作家たちが積み上げてきた厚い経験が反映された多様な価値観や視座が紡ぎだす作品群を重層的な星座にみたて鑑賞していく楽しみもあります。とりわけ今回は、成熟社会へとむかう現代人=考える市民に広く向けられたような社会性や同時代性が際立つ展示が多い印象で、たっぷりと時間をかけて向き合いたくなります。

そんな中、鑑賞者たちが声をあげて笑っていたのは、クリスチャン・ヤンコフスキーによるインスタレーション空間での、アートとは一見かけはなれたマッチョな男たちが登場して歴史的な彫刻と奮闘するアイロニカルとユーモアに富んだ映像作品。マッサージチェアに横たわって鑑賞できる作品もあり“おもてなし”の心も感じます。「アーティストは社会の気の流れをよくするマッサージ師」とは作家談。「接続」するためにはある種の柔らかさも必要なのでしょう。また、100年前に横浜で生まれた岡倉天心を題材にインドと六角堂を繋ぐ奇跡を絵画と音楽映像劇で伝えた小澤剛の「帰ってきたシリーズ」最新作や、複数のミュージシャンが異なる部屋で他者の演奏を聴きながら1つの楽曲を奏でようとするラグナル・キャルタンソンの実験的な作品、2015年から福島の帰宅困難地域で開催中の観に行くことができない展覧会をVRのように装置をつけて鑑賞できる「Don’t Follow the Window」など、充実した映像作品が堪能できることも今回の特徴といえるでしょう。

ちなみに前回の2014年では、アーティスティックディレクターを務めた森村泰昌さんの「音声ガイダンス」の“声”が作品のように個人的な忘却の海から浮かんできましたが、3年後にはどのように今回2017年の展示を捉えることになるのだろうと想像の卵をキービジュアルのガラパゴスゾウガメから受け取ったような気もします。そして今回の音声ガイダンスは「アプリ」を各人が手元のスマホにダウンロードして鑑賞するしくみ。近年のテクノロジーの普及を思うと同時に、日常にある「接続と孤立」を痛切に感じました。主要3会場以外にもBankART1929や黄金町バザールなど点在する関連サテライト会場でも盛り上がりをみせているようです。見どころの多い“ヨコトリ”のどこにプラグインして楽しむかはあなた次第。観賞後の潮風が心地よい港のまちから、それぞれの想像の羽を拡げて、どうぞすてきな星座を見つけてください。ボン・ボヤージュ!

会期:2017年8月4日(金)~11月5日(日) ※第2・4木曜日休場
時間:10:00 – 18:00 (最終入場17:30)[10/27(金)、10/28(土)、10/29(日)、11/2(木)、11/3(金・祝)、11/4(土)は20:30まで開場(最終入場20:00)]
入場料:【ヨコハマトリエンナーレ2017鑑賞券】一般:当日1,800円、大学・専門学校生:当日1,200円、高校生:当日800円 ※中学生以下は無料。
※横浜美術館、横浜赤レンガ倉庫1号館、横浜市開港記念会館地下に会期中1回ずつ入場可能で別日程も可。
【セット券】一般:当日2,400円、大学・専門学校生:当日1,800円、高校生:当日1,400円※中学生以下は無料。※「ヨコハマトリエンナーレ2017鑑賞券」「BankART Life V パスポート」「黄金町バザール2017 パスポート」がセットとなります。「BankART Life V」「黄金町バザール2017」には会期中何度でも入場可。
http://www.yokohamatriennale.jp
主催:横浜市、(公財)横浜市芸術文化振興財団、NHK、朝日新聞社、横浜トリエンナーレ組織委員会
[ディレクターズ]逢坂恵理子、三木あき子、柏木智雄 [構想会議メンバー]スハーニャ・ラフェル、スプツニ子!、高階秀爾、リクリット・ティラヴァーニャ、鷲田清一、養老孟司


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