SHIKIMEI REVIEW

単色のリズム 韓国の抽象

東京オペラシティ アートギャラリー

韓国の抽象画ときいて、日本美術の重要動向とされる「モノ派」(1960年代末〜1970年代中期)の中心的人物であり、2010年に“現代アート島”として人気の直島に単独の美術館が開設された世界的アーティスト李禹煥氏(1936年韓国生まれ/日本大学文学部哲学科卒業/多摩美術大学名誉教授)を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。

本展覧会は、韓国抽象画の特色ある潮流として李禹煥氏をはじめ1970年代より韓国で発展した「単色画」の作家19人による86点の作品を一堂に鑑賞することができます。広々とした会場では、静謐と洗練をあわせもつ平面作品が、鼓動のように繊細で確かなリズムを奏でているよう。作家は大まかに3つの世代に分かれ、物資が豊かではなかった困難な時代に日本や欧米にわたり世界の動向を本国に伝えた第1世代作家の作品から、李禹煥氏のように大戦後の新しい制度のもとで学び同時代美術の影響を受け、後に単色画とよばれる独自の抽象を築いた第2世代、さらに先人の志を受け継ぎながらも自由な作風をつくりだし現在の韓国美術を牽引する第3世代へと、抽象絵画の流れとともに彼らが生みだした豊かな創作の結晶と対話しながら時間がゆるすだけ存分に楽しむことができます。

例えば同じ黒であっても、作品のなかに仄かな色彩を感じられるのは、自然観を共にする東洋の精神性がもたらすものかもしれません。ひときわ私が感銘をうけたのは、作品に宿る時代を超越した「美」そのもの。それは、1つの線や連続した点をつくりだすために身体が覚えるまで修錬し、余分なものを削ぎ落とすことで、ようやく現れた美ではないかと思うのです。だから、重みはあるけど重たくない。個々に迸る創作動機を抽象に昇華させたミニマムな作品には、作品が何にも寄りかかることなく、作家自身が立っているのと同じように存在している凛とした美しさがあるのだと。

この見応えのある展示は、東京オペラシティビル共同事業者のひとり寺田小太郎氏が「東洋的抽象」と「ブラック&ホワイト」を収集の柱として収蔵してきた3500点の「寺田コレクション」から選ばれた作品と、日本各地の美術館やギャラリーから貸し出された作品で構成されています。単色画は2013年にアメリカのミネソタ大学でジョアン・キー氏により研究リサーチされ英語で論文発表されたことで世界的に単色画の作家たちへの注目が高まり再評価される機運のなか、満を持したように東京オペラシティ アートギャラリーで開催される本展。この場所と作品の幸運な巡りあわせもまた、今ここだけにある清々しい空気感を醸し出しているようにも感じられます。1970年代から1990年代にかけて日本でも盛んに紹介されていたという韓国の単色画。当時ご覧になった方も初めての方にも、新しい驚きと発見をもたらすものではないかと思います。

会期:2017年10月14日(土)- 2017年12月24日(日)
時間:11:00-19:00(金曜、土曜は20:00まで)
休館日:月曜
入場料:一般1,200円/大学・高校生800円
会場:東京オペラシティ アートギャラリー
住所 : 東京都新宿区西新宿3-20-2
HP : https://www.operacity.jp/ag/

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